微睡む卵 うたかた@ちゃり

ここは海に浮かぶ円盤状の医学系実験都市「あこや」、そこから長いチューブで海中に吊るされた球体の病院都市は「白珠」という。 ここでテルミは都職員として実験動物の飼育管理と、それにまつわる陸上での調達業務に従事し、海と陸とを往復しつつ暮らしている。 「お疲れさまでしたー」 一日の業務を終え、マウスやラット、ニワトリその他、動物たちのケージをひとつひとつ点検してからテルミは出入口へ向かう。外部か...

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テルミの旅  ~うたかた@ちゃり

 私は鳥話と人語を相互に翻訳し、人間の子供が鳥たちの庇護を受けられるよう仲介します。そのようにして人間の子供を保護するために作られた機械です。  私は本来子守のために作られた機械ですから、人の気分の良、不良はある程度わかります。そのせいか、今までに私を好きだと言ってくれる人が何人かいました。  ですが私は好きと嫌いを理解する事ができないので、相手の気持ちを汲んで行動に反映させることができません...

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ざしきわらし  ~うたかた@ちゃり

 第三次調査隊には鬼っ子が一人いるという噂だ。  その人は海から出たくて仕方がなかったらしく、上陸するなり駆け出して森へ姿をくらましたそうだ。  ここ十数年ばかり、岩棚の町には座敷童の目撃譚が複数みられる。  技術者たちの工房にいつの間にか入り込んでいて仕事を手伝ったり、図書室の通路を子供がうろうろしているかと思えば大人の顔をしていて、難しい本を読みふけっていたり、食堂で珍しげに漬...

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べっこう飴でつかまえて  ~うたかた@ちゃり

 斜めに崖にめり込んだ街の電力が復帰して扉が開き、外との出入りが自由になると、人々は占いマシーン「テルミ」に対する興味を失った。だからそのモニタールームは今はほぼスミ専用になっている。  鳥たちの声を人の言葉に変えてくれるシステム「テルミ」。人々に顧みられなくなった今でも画面にぽつりぽつりと言葉を映し続けている。それがどれほど正しいものかは分からないが。  街はいま新年の祝いの真っ最中、一週間...

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孵化する磯魚  ~うたかた@ちゃり

 それからテトラは何度か浜に来て、旅支度を手伝ってくれた。旅と言うのは大げさだけれど、僕らにとっては初の、目的地のある長距離移動だ。「必要なのはまず水と食料と、防寒具だな。野宿の時に使う」 テトラはこれまで自身が旅暮らしに役立ててきた、いろいろな品物を僕らに提供してくれた。干した果物などの保存食、植物の繊維で作ったシートや毛布のようなもの。 珍しいものがたくさんあり、主としてシオとピースケが興味津...

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こがれる想いを書きとめる  ~うたかた@ちゃり

 それから僕ら三人はテトラと共に、浜の草地の拠点へ戻った。戻る道々にピースケはテトラの足元に纏いつき、目に付く植物が食べられるかどうかひっきりなしに尋ねた。 浜に着いて全員を呼び集め、大きな黒い羽毛の人を引き合わせるとひとしきりの混乱。その後、ロンはひたすら絶句してテトラを見つめ、シオは彼の来歴や暮らしについて矢継ぎ早に質問をする。佐吉は彼の羽毛や肌、骨格の様子に興味津々で触れてもいいかと尋ね、半...

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遠いどこかを見つめるような   ~うたかた@ちゃり

 とらの上着がきれいな花模様になって帰ってきて、僕らはその晩テントの中で輪になって対応を協議した。とは言えそれはいつもと同じ食事風景だったけれど。 まずは今の今まで半蔵にしか話していなかった出来事を皆に知ってもらうことから始める。つまり、森で道に迷った僕を助けてくれた生き物たちについてだ。鳥のような黒い羽毛を持ちながら人のような暮らしをしている彼らについて。 その出来事を今まで仲間にも明かしていな...

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鐘のキャロル   @ちゃり

 灰色の冬の廃墟を二人の人間が前後して歩いている。 二人は共に粗末な古着を纏っており、前を行く小柄な人物は服も靴も分けて一層ぼろぼろだった。 彼はシールド、封印された器。闇そのものの漆黒の瞳をしている。それを守り後から行くのはガーディアン。  いったいどんな不思議の運命に囚われたのか、いつからか明けない冬に閉ざされた街があった。街を冬から解き放つため、二人は幻想の廃墟の中を巡っている。 その役目...

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Banquete  ~うたかた@ちゃり

 いま、世界を率いているのは鳥たちだった。 鳥たち、特にカラス。 新しいカラスの姿かたちは、地に落とす影を見ると人間によく似ていたが、顔も肌も手足の先もまったく違う。 カラスの肌は細かい羽毛に覆われており、空を飛べはしないが腕には羽根も残っている。手足の先は細い鉤爪になっていて、手指にはうろこのような紋がある。 また、カラスのほかにも。半鳥半人のようなものがおり、一方、鳥のまま全く変わっていないも...

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Família  ~うたかた@ちゃり

 庭先で子供たちが遊んで、賑やかな笑い声をたてている。 庭と言っても草や樹がてんでに繁って、外の森と大して変わらない。 人間の子とカラスの子、ホオジロの子や、空を飛ぶ鳥の子たちも、一緒くたにじゃれあっている。  遠い昔から人とともに暮らしていたカラスたち。 いつからか姿を変え、人によく似た生き物になった。 今も艶めく黒い羽毛を備えてはいるが、飛ぶことはやめ、地面を歩いて暮らしている。 それは、人...

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